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「善き人のためのソナタ」、「ペルセポリス」、「4ヶ月、3週と2日」

 2008-02-03
1月は個人的に色々と予定がつまってて忙しかったっす。

そんな中、カルチャー雑誌「テレラマ」主催で映画祭があり、久しぶりに映画館へ足を運びました。
この映画祭は、テレラマについているパスがあれば3ユーロで見られるというお得な企画。(テレラマを2ユーロで購入しなければならかったけど…。)テレラマが選んだ15本の映画のうち、3本を見に行きました。どれもすでに公開済みで、「遅ればせながら」の観賞。
この企画に参加している映画館も限られていたし、上映時間の都合もあり、見られたのが3本だけだったのは残念。本当は「Le fils de l'epicier(食料品店の息子?)」とか「La question humaine」、「Zodiac」なんかも見たかったのですが…。

「Le fils de l'epicier」は、カナル・プリュスのグラン・ジュルナルにジャンヌ・モローがゲスト出演したとき、彼女が期待している若手俳優を3人連れてきていて、そのうちの一人がこの映画の主役をやったニコラ・カザレで、なかなか面白そうな映画だなーと興味をもちました。(今回、見られなかったけど。)
ちなみにジャンヌ・モローは1月23日に80歳を迎え、キャリアも60周年(!)。

さて、見た映画の簡単な感想を。

「善き人のためのソナタ」(仏題「La vie des autres」)
テレラマ読者が2007年のお気に入りに選んだ映画。
善き人のためのソナタ統一前の東ドイツが舞台。秘密警察の優秀な大尉が劇作家を監視するうち、上司や仲間、自分の立場に疑問を感じ始めたり、段々と相手の人生に入り込んでいく様子がうまく描かれていた…けれど、それまでそんなふうに心を動かすきっかけが全くなかったのかな?と思うとなんかヘンな気が…。他人の生活の監視だって初めてじゃなかろーに。
淡々と指令をこなしてきたロボットのような人間が、もっと広い心の幅に気づいてしまう…というのは、ありふれたといえばありふれた物語だなーと思ってしまいました。
しかし、主人公の無表情さが秘密警察っぽくてとても良かった。インテリアの演出もうまく、主人公の慎ましい住まい、秘密警察の食堂の貧相な食事(但し、皿の縁に隠れてしまって何を食べているのかよく見えない。それくらい量が少ない)、それに対して劇作家のアパートの洒落ていること…。このコントラストから、自宅に帰ってむなしさや寂しさを感じる主人公の心情がひしひしと伝わってきます。
この主人公を演じた俳優、ウルリッヒ・ミューエは昨年7月に癌で亡くなったそうです。彼自身、東ドイツで生まれており、ベルリンの壁崩壊後、自分が盗聴されていたこと、「逸脱したアーティスト」として強制収容所送りになりそうだったこと、女優である妻が80年代に政治警察の協力者であったことなど、衝撃の事実を知ったのだとか…。彼自身が演じた役よりも、劇作家の方が彼の経験に近かったようです。

「ペルセポリス」(仏題「Persepolis」)
同名のバンド・デシネの映画化。
主人公、マルジャンが過去を思い返す部分はすべて白黒。実写ではなくアニメーションにしたのもモノクロにしたのも、美学的に正解だと思います。
cannes-persepolis.jpgイラン革命、そしてイラク・イラン戦争、周囲の大人たちがそれに巻き込まれ、大人たちの社会への疑問が子供心に反映されていくマルジャンの子供時代は、とても興味深かったです。「punk is not dead」と背中に描いたジャケットを着るマルジャンに共感をおぼえつつ、平和な暮らしの中で、自分と同じような子供がまるで違った生活をしているなど少しも想像せずに子供時代を過ごした自分、他方には弾圧の下で生きた少女…。共感と同情と後悔の織り交ざった気持ち。
マルジャンを温かい目で見守るお父さん、マルジャンに自立した女性に育ってもらいたいと望む現代的なお母さん、いつもマルジャンを励まし、時には厳しく叱るおばあちゃん、そして、納得のいかないことには敢然と発言するマルジャン…マルジャンと彼女を囲む家族のユーモアとヒューモアが良い。自分がマルジャンのような立場にあったら、彼女のようにはっきりと言いたいことを言う勇気があるだろうか?
それにしても、マルジャンがオーストリアに送られてから後はあんまり…。マルジャンの自伝なだけに、本当にただの自伝という感じ。
見終わって物足りなさが残りました。すごく楽しみにしていた映画なだけに期待はずれに終わりました。

「4ヶ月、3週と2日」(仏題「4mois, 3semaines, 2jours」)
2007年カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した映画。
チャウシェスク政権下のルーマニアで、非合法の中絶をしようという友人を手助けするオティリアを中心にしたストーリー。近年の流行ともいえるハンディカメラ撮影で、少女の揺れ動く気持ちが表現されています。
4mois.jpgオティリアの悲しみ、怒り、苛立ち、焦り…。友人に対する感情、彼氏に対する感情が素直に伝わってきます…が、これって私が同じような年頃に同じような気持ちを感じてきた女性の観客だから??そのような経験がなければ伝わってこないことなのかもしれません。
ストーリーはそれほど込み入ったものでも特異なものでもないけれど、全編を通してピンと緊張しています。映画として秀逸。
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コメント
善き人のためのソナタ、私もみました。一番面白かったシーンはシュタージの若い職員がホーネッカーの冗談を言うところです。実際スターリン時代のソ連ではあの程度のことで粛清された人がごまんといたようです。まあ、ああいう状況はその場におかれた人間じゃないとなかなかわからない部分もあるのでしょう。しかし確実に言えるのは私のような人間があそこにいればすぐに消されてしまうということでしょうか。いま日本では「K・Y」(空気読めない)と言う言葉がはやってて、これなどは日本に独特な中心不在の相互監視状態をあらわしているのかもしれません。仏語や英語で「空気」はどう表現しますかね?
【2008/02/05 03:40】 | pianoman in Matsudo #- | [edit]
ペルセポリス観ました。
マルジはうちらと同年代なんですよね、、、
たしかに物語は前半のマルジや両親たちの振舞いには
訴えかけてくるものがありましたね。イランの市井の
人々の考えや生活までが伝わってくることは
あまりないですからねー。
後半は政治的抑圧からだけでなく自分自身からも
逃げちゃってるんで、ちょっと暗くなっちゃった。
'4ヶ月、3週と2日'も興味深いですねー
こちらは来月からか。観にいこっと。
【2008/02/05 15:04】 | カナコ #- | [edit]
>pianomanさん
あのシーン、職員が所属と名前を聞かれるところで笑った観客が、私を含めて何人かいました。笑ってしまうほどバカバカしい、それが現実に行われていたことを辛く感じました。
しかし、あの映画、誰がどうなるのか…と、ずっとハラハラひやひやしながら見ていました。
>中心不在の相互監視状態
そうですねえ、日本はムラ社会ですもんねえ…。
仏語で「空気」って、この場合はなんでしょうね。「雰囲気」のことになるのかなー。ひとの気持ちを汲み取って…っていう意味では、フランスでもやっぱりそういうことができると人気がでると思いますけれどね。

>カナコさん
イラン社会の中って実際にはどうなのか、私は全然知らなかったので、本当に面白かったです。
そう、同世代なんですよねー。それだけでも親近感を感じますが、「レジスタンス」が英雄であったフランスにいることもあるせいか?ああいう人たちにすごくシンパシーを感じました。
それと、先日、イラン革命で亡命してきた人とラブストーリーがあったという知り合いのマダムの話を聞いたばかりだったので、ますます身近なものとして感じられましたし。
でも、後半、暗かったですよね。なんでオルリー空港で鬱々と煙草を吸っているんだろう…と思うと、あんまり元気の出る最後ではなかったなー。原作だとその辺、どうのかな?
【2008/02/06 00:37】 | shiba #h/1ZVhMA | [edit]
「善き人のためのソナタ」を私も見ました。久々に引き込まれる作品でした。個人的にも2年続けてドイツを旅し、旧東ドイツの傷跡も目の当たりにしてきただけに、この映画に対して批評家然とした覚めた見方は私にはできません。映画のラストはなんとも気の利いたセリフ。記念碑的な作品だと思いました。
ただ邦題はなぜ「善き人のためのソナタ」なのでしょう?余計なことをしないでほしいといつもながら憤慨してしまいます。
【2008/02/08 18:05】 | ZIZOU #- | [edit]
この映画は、かなり現実味のある(現実にあったと感じられる)映画でしたね。こういうことが起こっていたとひしひしと感じ、辛かったです。実際にドイツを見てきたZIZOUさんにとっては尚更なのではないかとお察しいたします。
まあ、日本で公開するのに、原題をそのまま訳したのでは、あまり魅力的に感じられない(観客を呼べない)のかもしれませんねえ。一応、楽曲「善き人のためのソナタ」が映画の中の重要なポイントの一つでもありますし、無根拠とは思いませんが…タイトルが映画の見方に与える影響は大きいですし、原題通りにしてほしいものですね。
【2008/02/09 15:54】 | shiba #h/1ZVhMA | [edit]












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