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憲法評議会による新移民法審査

 2007-12-02
かれこれ2週間以上前の話となってしまいますが、新移民法について憲法評議会による審議がありました。これは、国民議会と元老院を経て決議された移民法改定項目のうち、「違憲の可能性がある」として、社会党(野党)により審査が要請されていたもの。その項目とは、家族関係を証明するためのDNA検査導入についてと、民族調査について。
ずいぶん前の話とはいえ、このブログで何度か取り上げてきたことなので、触れておきたいと思います。

今回、DNA検査導入は世間に波紋を呼び、多くの反対意見や批判が出たので、この審議は注目されていました。

さて、審議が行われたのは11月15日。この憲法評議会は9名のメンバーと元大統領で構成されています。ただし、元大統領は、評議会に座を実際に占めるかどうかは本人の意志によります。ヴァレリー・ジスカール・デスタンは2004年まで不参加(現在は参加)、ミッテラン元大統領も不参加を表明していました(大統領任期終了後、数ヶ月で亡くなりましたが)。今年、ジスカール・デスタン元大統領に加わったのがジャック・シラク。今回、シラク元大統領をメンバーに迎えての初審議ということで、ちょっと話題になりました。

20071203000017.jpg初審議ということだけでなく、ジャック・シラクとニコラ・サルコジの確執は周囲の知るところであるため、サルコジ政策に水をさすのではないかとの見方もあり、話題性がアップ。また、憲法評議会の議長、ジャン-ルイ・ドゥブレは以前のシラクの側近であり、前内閣では国民議会議長を務めていた人物。国民議会議長在任中は、サルコジに批判的でした。憲法評議会議長となった今では、政治界のパワー・ゲームに一線をおいてシラク派を通しています。つまり、シラク&ドゥブレによる横槍が入るのでは…という予想があがりました。ドゥブレはそうした見方に対し、「憲法評議会の目的は政治的に決着をつけることではないし、メンバーはシラク派や政治関係者ばかりではないのだから、憲法に照らして公正に審議される」と反論。

とはいえ、前回、夏の間に国会を通った税制改変法案のうちの一つが憲法評議会に却下されたことがありました。この税制改変は、サルコジ政策の目玉の一つなので、サルコジ以下フィヨン内閣は多少の痛手を受けたと思われます。

ところで、10月初旬、アフリカ・オセアニア美術館であった建物が、国立移民歴史博物館として新生オープンしました。この博物館の開館計画はシラク大統領下で進められていましたが、結局オープンとなったのは、移民政策路線を異にするサルコジの代になってから。落成式には大統領はおろか内閣から誰も参加しないという無視状態。そして、この博物館の指揮をとっているのはシラク派のジャック・トゥーボン。晴々と自らの計画の一つである博物館の落成式に参加したかったのにいまや影の身のジャック・シラクは、オープンしてから数日後、ひっそりと訪れ、館長の説明を受けながら見学しました。このとき、報道陣に移民へのDNA検査導入について聞かれたジャック・シラクは、「近日中にこの件が審査される憲法評議会のメンバーであるからノー・コメント」としつつ、「これについては自分の信念と意見がある」と答えており、違憲判断を下す可能性を仄めかしていました。ちなみに、同じ質問を受けたトゥーボン館長は、「私と彼(ジャック・シラク)の意見は一致していると思う」と述べ、相変わらずのシラク派ぶりが伺えました。

シラク派はDNA検査導入に反対の雰囲気。ドミニク・ド・ヴィルパンもそうだったし。
…となると、シラク派である憲法評議会議長も反対かも?

DNA検査導入を廃止にしたい反対派にとっては、シラク-サルコジの確執によって風向きが有利になるのではと期待したいところ。

結果は、DNA検査導入に関する移民法13項は「合憲」。しかし、施行には条件付き。家族呼び寄せビザ申請を受けた場合、当局は提出された書類の確認を行わなければならず、また、それを行ったことを証明しなければならないと条件づけています。つまり、こうした書類の確認なしにいきなりDNA検査を勧めることがないように釘をさしています。

反対に、あまり議論されなかった項目、民族出自調査を許可する63項については、違憲の判断を下しました。フランスの憲法第一条には「フランスは不可分であり、非宗教、民主主義、社会的な共和国である。法の前ではいかなる市民も出自、人種または宗教による区別なく平等であることを保障する(la France est une République indivisible, laïque, démocratique et sociale. Elle assure l'égalité devant la loi de tous les citoyens sans distinction d'origine, de race ou de religion)」とあり、憲法評議会はこれを引いて、統計研究は「人種や民族出自の上に立脚するものであってはならない」と結論づけています。

ところで、とある2つのサイト(1つは個人ブログ、もう1つはニュース系)で「移民にDNA検査を義務付ける法案」と書かれていてショックを受けました。いくら大統領がサルコジでも、フランスがそんなこと(義務付け)を許さないってば!DNA検査は義務付けではありません。戸籍の信憑性が疑われ場合、かつビザ申請者が望んだ場合のみです。そこんとこヨロシク。

参照:
Le Mondeより




個人的には、DNA検査よりも民族調査の方がおかしい(というか、こういう法案が世間で充分議論されずに通ってしまうことがおかしい)と思っていたので、違憲と判断されてほっとしました。

逆に言えば、正直言って、DNA鑑定の項目は認めるべき微妙な問題だなーと思っていたんですよね。
戸籍管理があやふやな異国の地から来た場合、本当の家族(血縁関係があろうがなかろうが)なのに、フランスのお役所で「これじゃ受け付けられない、却下!」って言われて家族であることを証明しようがなかったら、泣きたくなるではないですか。しかし、血縁関係がある家族にはDNA鑑定が最後の手段となるのなら、これは一つの救いになるでしょう。家族は血縁関係だけではないけれど、血縁関係も家族の一つのかたちと認められているのだから、DNA鑑定も家族であることの証明の一つとして認められてもいいかも…と私は思いました。

しかし同時に、DNA鑑定には反対の気持ちもありました。国立倫理諮問委員会(CCNE)が意見書の中で、「社会的・文化的な同一性に関する問題に対して、最終的な決定を下すよう生物学的真実に頼る措置」に否定的であったことに同感です。(この意見書については以前に書いたこちらを参照のこと。)また、バイオメトリクスの倫理に関する法に照らして、外国人に対する差別になる(これについては、以前にル・モンドの社説を引用したので、こちらを参照のこと)。また、DNA鑑定導入のような法案は、移民に対する懐疑的態度、不正をおかして入国するものだという前提から生まれているのだという批判にも同感です。

反面、DNA鑑定反対の署名運動の拡大にはちょっと距離を置きたい気分でした。これに参加していたフランス人の中には、現実的にDNA鑑定が一つの救いになる外国人のことはどうでもよくて、ただ「フランス的例外」を強調していただけの人もいるのではないか…と疑ってしまったからです。

そこで、フランス人たちに言っておきたい。

DNA鑑定に反対するからには、同時に「戸籍証明が無くても受け入れろ」「それがダメなら少なくとももっと他の措置を広げろ」とまで言うべき。そうでないなら、移民法に関する議論からかけ離れてしまうか、単にナショナリストなだけ。

DNA鑑定に賛成している人たちからは、よく「不正をおかしていないなら、DNA鑑定を受けてもいいではないか」という、彼らが「正論」と信じているところのものが聞かれますが、こういう単純で暴力的な論理はこわい。「申請者が志望した場合に限る」としている以上、義務付けでも強制でもないし、受けない権利・自由もあるわけで、「DNA鑑定を拒否するからやっぱり不正をおかしているのだ」とは絶対に言ってはならない。

そこんとこヨロシク。
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