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ありがとう、オブリガード

 2007-07-04
土曜日の夜、ベルヴィル中華街にて友人と夕飯。重い雲がたなびく空に、天気がもつか心配しながら出かけたけれど、なんとか雨に降られずにすんだ。

さて、以前から噂に聞いていたものの、名前がはっきりしなくて、どれが当のお店なのかわからず入ったことがなかった「温州ナントカ」いうレストランがお目当て。今回は、しっかり住所と名前を確認。ニュースダイジェストの過去記事も参照。正しくは「温州正宗テン心」だった(テンは「黒」へんの右隣に「占」)。そのうえ、友人はすでに何度が行ったことがあるというので頼もしい。

が!なんとお店は閉まっていた。定休は木曜日って書いてあったのに。
仕方がないので、隣りのお店に入ってみた。なかなか混雑していて期待できそうである。

しかし、このお店、狭くて、みんなラーメンものを食べて、家族連れでもさっと食べてさっと帰るような、長居しないタイプのお店だったみたい。そんな中、メニューを見ながらさんざん迷うのんびり屋の私たちは異色で、お店の雰囲気にそぐわない客だったのだろうか、ウェイトレスの女子二人がめちゃくちゃ無愛想。それとも、これが本場の雰囲気なのだろうか…。何か頼もうとすると、中国語で何か叫ばれる。罵られているのかも…という気がするが、何を言われているかわからないだけに、邪推するのもはばかられる。とりあえず、おとなしく待つのみ。居心地が良かったとは言い難い。

料理は、麺ものが美味しかった。そのうえめちゃ安。海老のチリソース炒め、空心菜炒め(フランス語ではsaute de legume varieと書いてあったけど、野菜が一種類だけだったのは何故?)、燻製豚肉入り焼きそばの3皿を二人で分けてお腹いっぱい。それに、ビール大一瓶とワインのハーフボトル、最後にお茶を頼んで計30ユーロ。安いなあ。肉まんと餃子が売り切れだったのが悔やまれたが、それもあったら本当に食べきれなかったと思う。

食事の途中、私の背後の席で叫び声が上がった。何かと思って振り返ったら、中国人の女性客が道路に向かって何か叫んでおり、誰かを追いかけようという素振りをみせたが、テーブルの真ん中の席なのですぐに飛び出せず、諦めたようだった。どうやら、窓際の椅子の背にかけていたバッグがひったくられたらしい。思わず自分のバッグの所在を確かめてしまった。久々にこわい思いをした。向かい側に座っていて現場を目撃した友人によると、ひったくられたのは子供のバッグだったようだ。被害にあった客は、憤慨しながらもしばらく食事を続けていたので、大した実害がないようで、ちょっと安心した。

ゆるゆると食事、最後にお茶を頼んで(お茶を頼んだところでまた叫ぶように何か言われたが)、10時ちょっと前には店のシャッターも半分閉まり(早っ)、そろそろ会計を頼もうか…という頃に、喧嘩(多分)が始まった。家族らしいおやじさんとウェイトレス二人が何か言い争っている様子。こちらに関係ない以上、勝手にやってもらっても構わないのだが、口論の激しさに辟易する私たち。やっぱり居辛いし。と、もじもじしていたら、まだ食事をしていた隣りの男性二人が話し掛けてきた。

一人に、「あなたがたは日本人ですか?」と聞かれ、そうだと答えると、「私の母は今、京都に行っているんです」と嬉しそうに微笑んだ。「旅行で?」と尋ねると、「仕事で。数学者なのです」と言う。へえ~と感心しつつ、なんとなく会話が始まった。

彼らは二人ともポルトガル人だった。数学者の母をもつ方はミュージシャンで、もう一人は建築家。二人ともパリに住んでいるそうで、フランス語が達者だった。

そして二人とも日本に多少興味があるように見え、「『ありがとう』の語源を知っているか?」と聞いてきた。私は「有り難い」から連想して、「『稀なこと』という意味からきている」と説明した。すると、「僕は、ポルトガル語で『ありがとう』という意味の『オブリガード』が語源だと聞いている」と教えてくれた。昔、日本人は無言のままおじぎで感謝の意を示したが、言葉で表現するのが常であったポルトガル人はそれに答えて「オブリガード」と言ったのだ、と。それを日本人が習得し、なまって「ありがとう」になったのではないか、ということだった。それにしてもポルトガル人がやってくる以前に「ありがとう」という言葉がなかったというのもどうだろうか…と疑問に思ったのだが、まあ有り得ない話ではない。とりあえず、実際のところはどうかわからないが、そういう話は面白い。そして、彼らの国ではお茶のことを「チャ」と言うそうで、これは逆に日本から輸入された言葉だろうと言っていた。数世紀前から物と共に言葉が交換され、海を渡り、帰った土地に伝わっていつの間にか根付ている。先人達の交流が今この場につながっているのかと思うと、嬉しく豊かな気持ちになった。

それから、「日本と言えば」と、色々な名前を出してきた。映画のクロサワ、小説家のバナナ(吉本)、建築家のアンドーなど…。こちらもポルトガル人の名前をあげようと頭の中で検索するのだが、思いつくのは友人のペドロだけである。

そのペドロであるが、天文学の博士号をもっていて、コンピューター関連にも詳しくプログラミングなどもやる、完全理系で、数学の男といってもよい。で、ミュージシャンの彼の母はポルトガル人で数学者、父もポルトガル人で数学者だという。はて、数学に長けたポルトガル人が急に3人になってしまった。今までのイメージにかけ離れているので、まさかと思いつつ、ポルトガル人は数学に強いのか?と聞いてみた。そうしたら、「彼らは珍しい」「普通はからっきしダメだ」との答え。やはり自分の出会った少数サンプルを一般化してはいけないね。当たり前だけど。

まあ、「今までのポルトガル人のイメージにかけ離れている」とはいえ、じゃあポルトガル人とはどういうイメージなのかというと、特別に思い描いていたわけでもない。それでも、とても穏やかに話す二人は、なんとなく典型的ポルトガル人という感じではなさそうだった。カウンターで叫びあう中国人親子(?)を指差しながら、「日本では普通、ああいうことってない?」と聞かれ、友人と「全然ない!」と答えると、「ポルトガルではよくあることだよ、地中海気質だから」と言われた。まあ、たしかに、南イタリアなんかでもしょっちゅう見られそうな光景ではある。ナポリの人たち、声がでかかったしなあ。しかし、それに比べ、彼ら二人はとても落ち着いた雰囲気で、こちらも「知らない人だから」と警戒せずに会話を楽しむことができた。おかげで、お店の人の態度から感じていた居心地の悪さも霧散した。久しぶりに人懐っこさや心の広さのようなものに触れた気がした。

多分、出身国の問題ではないのだろう。昔は知り合う機会の多かったアーティスト系の若いフランス人たちも、同じような雰囲気を持っていた。今でもそういうフランス人たちは沢山いるはず。どこかで、そういう人たちにもっとめぐり合うこともできるだろう。

もしかしたら、自分は、今知っていると思っているフランス、見慣れてしまったフランスではなく、もっと違うフランスに出会いに行くべきなのかもしれないと思った。

ベルヴィルで、なんだかいつものパリではない夜を過ごした気分だった。
ありがとう、オブリガード。
そして、また会いましょう、オルヴォワール。
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コメント
ありがとう 起源説には諸説あり、ポルトガル語起源説もそのひとつです。

他にも 
はい の起源は広東語からきている。
(だから香港人は 肯定の受け応えをはい という)
というのがあります。
【2007/07/04 06:04】 | Simon #NwqzF3Bo | [edit]
「茶」は、たいがいの言語で
"チャ"か"ティー"と言われると聞いたことある。

ばななにアンドーはそんだけ定着してるのね。そいえばロハスな合言葉「もったいない」はどぉーか。
【2007/07/04 15:38】 | kazz. #- | [edit]
shibaさんが最初に行こうとしたお店、私は大好きで何回も行っています。
私も先週行ったんだけど、お休みでがっかり。早めの夏休みを取っているようですね。
以前、ちょっと食にウルサイ日本の知人を連れて行ったら、最初はお店の雰囲気にびっくりしていたものの(子供がギャーギャー騒ぐ、大人も中国の人はとにかく声がデカい、立ったり座ったりせわしない・・・)、お料理には大満足していました。そして、安い! ついでに、お店のお兄ちゃんの愛想もいい!
ヒミツにしておきたいな、と思ってたけど、ニュースダイジェストに載ってたんですね。
私の特にオススメのお料理がいくつかあるので、今度ぜひぜひ一緒に行きましょー!

「ありがとう」の語源に関しては、ちょっと疑問を感じるかも。平安時代に清少納言は「ありがたきもの」なんて文章を書いているんだし。
言葉の意味が変化する過程でポルトガル語が影響した、というのはあるかもしれませんね。
【2007/07/05 00:13】 | mikeko #- | [edit]
上記の「ヒミツにしておきたい」というのは、shibaさんに教えたくない、という意味ではもちろんなくて、ガイドブックなんかに載ってたくさんの人に知られちゃうとちょっとやだな、ということです。
念のために補足。
【2007/07/05 21:13】 | mikeko #- | [edit]
>Simonさん
ぐぐってみましたら、結構、このポルトガル語源説ってよく知られているみたいですね。どちらかというと、ポルトガルの方で言われている話のようですが。
へえ~、香港では肯定の返事を「はい」と言うのですねー。否定の返事はどうなのでしょう?

>Kazz.さん
お茶は、ロシア語では「チャイ」でしたよね。フランス語では「テ」なのですが、イタリア語でもそうだったな…と調べてみたら、スペイン語、ドイツ語でも「テ」「テー」などと言うみたいです。綴りは違いますが。
いやあ、ばななにはちょっと驚きましたよ。そういや、その前にミシマの名も挙げてたっけな。ミシマを好きな人は多いですねえ。
「もったいない」は、あんまり聞いたことないですねえ。って、ロハスなんですか、その言葉。「もったいな~いもったいな~い」(声:市原悦子)って、もったいないオバケを連想してしまいましたが。

>mikekoさん
あはは、そんなに心配しなくても、わかりますって!>ヒミツ
ずいぶん前に、学業を終えて日本に帰ったエツコさんに「麻婆豆腐がおいしい」と教えてもらい、mikekoさんと行こうとしたことがあったはず…覚えてないかな。そのとき、「温州」ってつくお店があんなにあると思わなくて、どれかわからなくて、結局、大通りを挟んだ反対側地区に行ったような。いつものPHOのお店に行ったんだったかな。その後、エツコさんがパリに戻ってきたときに、一緒にベルヴィルでご飯を食べる約束をして、「あのお店、教えて」って頼んだら、「もう忘れちゃった」って言われてガックリだったのよ(笑)。今度、是非ご一緒させてください。
なるほど、「枕草子」にそんな項目がありましたね。さすがmikekoさん、知性を感じますわ。
【2007/07/05 22:58】 | shiba #h/1ZVhMA | [edit]
ありがとう、と言えるときって
感謝したいときやさりげない言葉が嬉しかったとき。
この言葉が存在しなかったら、一体どうやって気持ちを伝えることができる? のか…
代わりになる言葉がありそうで見つからないものですね。
【2007/07/06 14:27】 | まおたん #- | [edit]
日本人は、「ありがとう」ではなく「すみません」と言いがちだ、と子供の頃に何かで読んで、結構ショックを受けました。そういえばそうかも、なんで謝っちゃうのかねえ…と。「ありがとう」と言える人、またそう言われることをしてあげられる人、そして「ありがとう」という言葉…、大切にしたいですね。
【2007/07/08 00:29】 | shiba #h/1ZVhMA | [edit]












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