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東西ドイツにおける敗戦直後の喪の作業 その1

 2006-12-09
シンポジウムからはや一週間経ってしまいました。が、まだ書いておこうと思っているものがあるので、続き。
もうひとつURSS関連で、ベロモルカナルという、白海とバルト海をつなぐ運河の建設にまつわる本についての発表もあり、これも日本語サイトで検索してみたらあまり知られていない様子だったので、ちょっと書きたい・・・と思っていたら、同じシンポジウムに出席したchaosmosさんがまとめてくださったので、そちらに丸投げ。(TBもいただいておりますが。)

さて、クラフチェンコ事件で、「国の自尊心に関わる」という点に着目してみたわけですが、これは同じシンポジウムで、フロイトの理論を援用しながら東西ドイツの戦後の違いを分析したピエール-イヴ・ゴダールの「RFA-RDA:des memoires en miroir」という発表が想起されます。ゴダール氏は「Le fardeau de la memoire」という本を1997年に出版しており、発表はその中の2章を要約した内容でした。シンポジウムの前に最初の数十ページを読んで予習したので、発表以外の部分も合わせ、かいつまんで(?)ご紹介したいと思います。専門の方にとっては新しいものは見当たらないと思いますが・・・。ただ、日本からいらしたドイツ専門の先生は、精神分析的視点を取り入れているところは面白いと仰っていました。もしかしてそれってフランスっぽいのでしょうか。でも、逆に、精神分析を専門にしてる人(特にラカンなどやっている人)にとっては「援用ってそれだけ?」って感じかも。なお、シンポジウムの栞によると、ピエール-イヴ・ゴダールはパリ第4大学の先生。ぐぐってみたら、パリ第5大学でも教えていたようです。専門は何なのかよくわかりませんでした(精神分析なのか社会学なのか・・・文化人類学という話もあったけど)。



ピエール-イヴ・ゴダールはその著書の中で、まずフロイトの「集団心理学と自我の分析」を想起しつつ、ヒトラーとドイツ国民の関係を分析している。フロイトはその論文で、軍隊と教会を例にとりながら、集団の心理がどのように形成されているか、理論展開を試みている。そこでは、まず集団を統率する者が各メンバーの自我理想となり、同じ自我理想を抱く同胞が互いに同一視することで結束する、と説明されている。ゴダール氏によれば、ナチス下のドイツも同様で、ヒトラーが国民の自我理想となっていた。ドイツ国民はこの自我理想に圧倒的に魅せられ、欲動(リビドー)は自我理想となった対象に大量に備給される。そうなると自我への欲動備給が少なくなり、自我は貧困になる。弱まった自我にとっては、自我理想的対象の指示に従うことが悦びとなり、無批判にそれを受け入れるようになる。そのような状態の集団がヒトラーを失うことは、それまでの多大な欲動備給の対象を失うことである。行き場のなくなった欲動を撤収しなければならないが、貧弱な自我にとってこの撤収作業は難しい。このような観点から、敗戦直後のドイツ国民に戸惑いがあったこと、喪の作業(フランス語でいうところのdeuil)が非常に困難であったことは、容易に想像しえる。
他方、ドイツ国民は戦後、自らの名のもとに恐ろしい行為が行われていたことを知らされ、あまりのことの重大さに罪悪感を背負いきれず、目を背けようとしたことも、心理メカニズムの面からみれば理解可能である。つまり、自我が罪の意識に押しつぶされないように防衛機能が働いた、と考えることができる。この過多な罪悪感は、自らの名によって殺された犠牲者に対する喪の作業を困難にした。
このように、ピエール-イヴ・ゴダールは、ドイツ国民にとって二つの点で喪の作業が困難であったことを指摘している。

ところで、戦後、ドイツは戦勝国によって二分された。ドイツ民主共和国とドイツ連邦共和国、すなわち東ドイツと西ドイツである。前者はソ連に、後者は連合国、米・英・仏の三国に、戦後処理を任せられた。二つの地域で、戦勝国による戦争責任の問われ方は異なった。ソ連は、ヒトラーとナチス政権に責任がありドイツ国民には罪がない、という姿勢で臨んだ。それに対して連合国側、特にアメリカは、ドイツ国民全体に対して「あなたたちの責任だ」とはっきりと非難を述べ、集団の罪悪感に訴えた。この戦後指導の方針の違いは、冷戦激化の中で、やがて二つのドイツの分裂を深めることへとつながっていく。

(続く)
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