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フランスの北京五輪ボイコット議論

 2008-04-06
ラサでの暴動以来、フランスでは継続的にマスコミでチベット問題が取り上げられています。特に、北京オリンピックをボイコットすべきかどうかが問われています。

折りしも、明日の4月7日は聖火リレーがパリを駆け抜ける日。抗議行動などが予定されており、この週末はメディアでも大きく扱われていました。

RSF pekin2008世界のここかしこでニュースになったと思いますが、3月24日、アテネで行われた聖火採火式で、「国境なき記者団」のメンバーが闖入。取り押さえられるまでの少しの間、手錠を五輪のモチーフにした黒い旗を掲げて、北京オリンピックに対する抗議をアピールしました。この「国境なき記者団」の本部はパリにあり、代表のロベール・メナールはフランス人。フランスではよく知られた団体です。

最近の抗議行動から、「国境なき記者団」はともするといわゆる「人権保護団体」と思われているかもしれません。正確には「報道の自由」を擁護する団体。政府に批判的な報道や不利となるスキャンダルなどの検閲、それを書いたジャーナリストの逮捕など、世界で行われている報道の自由・表現の自由の侵害に対して抗議しています。彼らは以前から中国での検閲を非難しており、今回のチベット問題で突然中国の人権問題を訴え始めたわけではありません。

さて、フランスは、1789年に人権宣言を採択し、国民の多くがそれを誇りに感じている国。だから、よその国の話であろうと、人権問題には敏感。中国の人権問題は、これまでにも時々フランスのメディアで扱われており、それは報道の検閲や、政府の方針に反する思想の人々の逮捕、多数の死刑執行、苛酷な労働条件などについてでした。どれも人権問題絡みの報道といえます。だから、フランスでは「中国は人権について非常に問題が多い国だ」というイメージが広く一般にあると思います。

そのような経緯でチベット問題が報道されたので、フランスでは中国批判の焦点が人権問題に集まっています。また、中国での人権問題について抗議するために北京オリンピックをボイコットしようという声は以前からあり、チベット問題が大きなニュースになった後はボイコットへの世論の関心がたかまってきました。

ボイコットへの呼びかけは、私個人としてはすでに2005年の夏、ヴィレット公園で行われた野外映画上映会で見た記憶があります。映画が始まる前に、いくつかの広告(商業的CMだけでなく、公的な催し物やNGO団体による情報宣伝など)が上映され、その中に北京でのオリンピック開催を疑問視するものがありました。内容もなかなか衝撃的でしたが、「へぇーこんな宣伝もやるんだ」と驚いたせいもあり、強く印象に残っています。それは、歓声に沸くスタジアムで、陸上選手がスタートラインにつくと、「用意」と言った後、スターターが持っていたピストルを選手に向けて発射する…というものでした。その後、中国での人権問題とそこでオリンピックが行われることに対して異議を申し立てる言葉が続き、例の手錠を五輪に見立てた黒いイメージが出てきました。「国境なき記者団」の掲げた旗と同じイメージだったので、もしかしたらそれも同団体によるものだったかもしれません。

また、ボイコットについて、昨年から明言していたのはセゴレーヌ・ロワイヤル。2007年5月、大統領決選投票を前にした公開討論で、セゴレーヌ・ロワイヤルは国際情勢にふれ、北京オリンピックのボイコットも辞さない考えを述べました。というのは、ダルフールで虐殺が続く中、中国はスーダンの石油を目当てにして、惨状に対しては傍観を続けており、介入に消極的などころか虐殺を許容するかのような態度をとっていることは許しがたく、中国政府に圧力をかけるためにオリンピックをボイコットすることも提案する、と強い姿勢を示したのです。ちなみにそのとき、対するニコラ・サルコジは、「北京オリンピックをボイコットする考えは全くない」と述べました。

そのような流れがあって、今回のチベット暴動。最近、フランスの世論はボイコットに傾いてきたようです。(スティーブン・スピルバーグやリチャード・ギアのイニシアティブが影響したかどうかは、ちょっとわかりません。多少影響はあったかも?)

ただし、一口に「ボイコット」と言っても、現在フランスで検討されているのは「開会式のボイコット」。競技まで、つまりオリンピック全体をボイコットするという考えはちょっと「急進的」と思われているようです。

インターネットで検索してみると、3月18日あたりから開会式ボイコットの話がメディアに大きく取り上げられてきています。3月19日と20日に行われた世論調査では、開会式ボイコットに53%が賛成、42%が反対と答えています。しかし、オリンピック競技全体に対するボイコットには半数以上の55%が反対。賛成は41%でした。
今週末に発表された世論調査(同じ調査機関CSAによる)では、開会式ボイコットに賛成する人が62%に増えています。

ボイコット議論が続く中、サルコジが「あらゆる選択を検討する」としてようやく開会式をボイコットする可能性もあげたのが3月25日。人権問題には黙ってられない国という自負のあるフランス人たち(ま、国民全員がそうだというわけではありませんが)にとっては、国家元首の反応が遅いと感じられたのでは。ル・モンドの読者のコメントの中には、「おかしなもんだな!世論がボイコットに傾いてきたのを見て、やっとそんなことを言うんだ」という意見も。

さて、昨日(4月5日)のル・モンドに、人権担当相、ラマ・ヤドのインタビューが掲載されました。月曜には聖火がパリに到着することをふまえ、チベット情勢に絡めて中国での人権問題とオリンピック開催に関するインタビューです。この中でラマ・ヤドは、ニコラ・サルコジが開会式に出席しない可能性について訊かれ、オリンピック開催時にはフランスがヨーロッパ議長国となるので「他諸国と話し合ったうえで発表するでしょう」としながらも「彼が開会式に出席するには、三つの条件があります。人民への暴力を停止すること、政治犯を解放すること、チベット問題への解決とダライ・ラマとの話し合いを開始することです」と述べています。

ラマ・ヤドのこの「三つの条件」に、「さすが人権担当相、強固な姿勢をみせた」という賛辞もあがり、「国境なき記者団」のロベール・メナールも喜んだようですが、後から「条件などという言葉は使っていない」とラマ・ヤドが否定。ル・モンド側は、「忠実に転写した」と主張しています。
まあ冷静に考えてみれば、そんな大事なことを当の大統領でもそのスポークスマンでもなく、人権担当の閣外大臣が公表するというもヘンな話。
彼女の上司ともいえるベルナール・クシュネール外相は国営TV放送フランス2に出演、「ニコラ・サルコジは3月25日に発言した通り、すべての選択を考慮する姿勢であり、フランスのとる立場に条件などない」と火消しにまわっています。

対して、相変わらず断固としてボイコットの考えを支持しているのがセゴレーヌ・ロワイヤル。今日のジュルナル・ドゥ・ディマンシュに、「まだまだボイコットによって圧力をかけるべき時期」と述べています。「抑圧と暴力行為はオリンピック開催の間にピークを迎えるに違いない」とし、開会式だけをボイコットするのでは意味がないという考えを示しています。また、パリ市長、ベルトラン・ドラノエは、聖火がパリをリレーする間、市庁舎前に人権擁護をアピールする垂れ幕を掲げることを決めましたが、セゴレーヌ・ロワイヤルは、そんなことでは手ぬるいといわんばかり。(蛇足ですが、ベルトラン・ドラノエとセゴーレヌ・ロワイヤルの両氏は、PS次期書記長を狙い、お互いをライバル視、牽制している…かも。)

中道派Modem党首、フランソワ・バイルーも、7日のパリ聖火リレーの際に、「チベット」と書いたTシャツを着るなどして意思を示すよう、静かな抗議行動を呼びかけています。また、「60台のオートバイと、ボディ・ガートが何人いるのか知らないが、ヘリコプターや100人の伴走警官(…)、そういう状況を見ていると、フランスがこのイベントを楽しんでいるとは思えませんね」と、厳重な警備に対して皮肉的な見解。

2436375635-jo-rsf-veut-mener-des-actions-spectaculaires-lundi-paris.jpgこの厳重な警備は、「国境なき記者団」が必ず抗議行動をすると予告していたため。ロベール・メナールは、ここまでの警備に「国家元首の訪仏でもここまでの警備はない」「仰天している」とし、リレーを妨害することは諦めた模様。「暴力は私たちの方にあるのではない」ことを示すため、暴力的な抗議行動はしないことを約束。但し派手なパフォーマンスをするつもりらしい。

今日のロンドンは、悪天候もあり、かなり大変なリレーとなったようですが…。朝日新聞だったか、「さながら障害物競走」というくだりには笑ってしまいましたけど。

明日のパリの聖火リレーはどうなるのでしょう。なんと、今、こちらも雪が降ってますけど!

参照:
Yahoo Franceより

「Francois Bayrou appelle ses partisans a manifester sur le passage de la flamme olympique a Paris」(AP)
JDDより
「Royal: "Je n'ai pas d'adversaire"」
Le Mondeより



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