移民に関する二つの世論調査

4月30日、フランスの世論研究機関Ifopが実施した調査をジュルナル・ディマンシュ紙が発表。それによると、フランス人の約半数が、移民に関するサルコジ内相の考えに同意している、とのこと。これを目にして私は気が重くなってしまったのですが、記事をよく読んでみると、サルコジ内相の考えに47%が賛成、52%が反対、1%が無回答。「約半数が同意」とか言って、反対も約半数…っていうか、反対の方が多いじゃん!なんか嫌な見出しのつけ方だな。
しかし、この調査によると、移民についての考えで最も共感を得ているのがサルコジ内相だという。次いで多くの支持を受けているのはジャック・ラングで、彼の考えを41%が支持(54%が反対、5%が無回答)。続いて、ドミニック・ド・ヴィルパンに28%が同意(68%が反対)、ローラン・ファビウスに25%が同意(68%が反対)しているとのこと。
移民といえば、その排斥が極右の「カンバン」なわけですが、フィリップ・ド・ヴィリエには21%(反対75%)、そしてジャン−マリー・ル・ペンには20%(反対79%)の賛同者がついているらしいです。

翌日の5月1日、もう一つの世論調査の結果が明らかに。こちらはLH2という機関が調査、5月2日付けリベラシオン紙で公表されました。それによれば、約半数のフランス人が「移民はフランスにとって繁栄の鍵である」と答えたという。ん?また「約半数」ですか?もしかして、実は半数以上がネガティブな回答だったりして?…と続きを確認。すると、先のポジティブな回答が46%、反対に「移民はハンデである」と答えた人が36%、「どちらでもない」が6%、無回答が9%。外国人である自分としては、ほっとさせられる結果でした。
しかし、経済については少し事情が違うようです。「移民はフランス経済の繁栄の鍵である」と考える人は42%と、ちょっと数が落ちます。反対に「ハンデである」と考える人の率は変わらず。社会的給付金についてとなると、61%が「移民はハンデである」と回答(「繁栄の鍵である」は23%)。
また、移民についての政治選択に関して、「安定した状況(5年滞留)にいる非合法移民の滞在正規化」に、76%が「どちらかといえば賛成」。そして、54%が「フランスは移民を受け入れる国であるべき」と考え、48%が「フランスの経済的需要に応じて移民を選抜するべき」と考えているそうです。
そして、移民改案の争点となる「家族呼び寄せ」についてですが、34%が「もっと厳しくするべき」であると考えているものの、58%はその反対の意見であるという結果が出ています。

統計は、あくまで参考、それが絶対的に全体の声を表すものではないけれど、とりあえず、サルコジ内相の改正案に賛成している人の方が圧倒的に多い、というわけではないと考えることができそうです。

060501172233.gvdv5mlj0_des-manifestants-protestent-contre-le-projet-de-lob.jpg←こちらは、移民法改案反対デモで、「あなたには恋に落ちる権利があったんだっけ?」「移民法案=フランス-外国人カップル=非合法カップル」と書いた紙を掲げる参加者。

参考:
Yahoo Franceより

Immigration: 47% des Francais se declarent proches des idees de Nicolas Sarkozy, selon un sondage(AP)
L'immigration, un atout pour la France selon 46% des Francais(AFP)

移民法改案の特徴

昨日(5月2日)、サルコジ内相が提出した移民法改案の審議が国会で始まりました。

数日前から移民法改案について取り上げていますが、今回の法案で何が変わるのか、何が争点となっているのか、具体的に記していなかったので、その点をまとめたル・モンドの記事を訳してみました。

原文はこちら↓

---以下、訳出 (〔〕内は訳注です)---
新しい滞在許可証、「資格と能力」の追加:三年の期限つき、更新可能で、「フランスまたは出身国の発展と威光のため」の好機に寄与する「人格と素質」を具えた外国人に配布される。また、外国人学生は多数の基準(段階、国籍、学歴、研究計画…)による選抜の対象となる。

ケース・バイーケースの滞在正規化:1984年から存在する措置、すなわちフランスに〔不法で〕10年間滞在した後、正当な権利として滞在許可が正式におりるという措置は、新しい法案によって廃止される。そして、1998年より導入された措置、欧州人権条約より直接引き出された「私的、家族的生活(vie privee et familiale)」形成についての措置も強く制限される。

フランス人の配偶者に義務付けられた長期滞在ビザ:一時滞在許可証を取得するために、フランス国内で結婚したフランス人の配偶者は、長期滞在ビザを申請するために出身国へ戻らなければならなくなる。

家族呼び寄せの条件の厳格化:法案は、家族呼び寄せの基準レベルを、収入と住宅の項目について、引き上げる。また、申請のために必要なフランス滞在期間が現在の12ヶ月から18ヶ月に延長される。

取得が更に難しくなる在留許可証:長期滞在許可証は、フランス人の配偶者に、又、合法的に10年間フランスに滞在したことを証明する外国人に、「当然の権利として」配布されるものではなくなる。家族呼び寄せの資格で入国した外国人、また、フランス国籍の子供を持つ親、そしてフランス人の配偶者は、長期滞在許可証を申請するために、〔現行の〕2年ではなく3年間待たなければならなくなる。また、「共和国に同化」したことを証明しなければならなくなる。

一定の滞在許可証取得者のために2003年に導入された「共和国に同化する約款」が、ほぼ全ての長期滞在許可証配布に義務付けられるようになる。

---以上、訳出終わり---

これら改案される点の中で、特にキリスト教団体や反対政党から批判の声があがっているのは、「家族呼び寄せ」が難しくなる点、また、不法で10年滞在した移民の滞在正規化が難しくなる点、です。

ル・モンドでは、先の記事が掲載されたのと同じ4月27日、この法案の報告官、ティエリー・マリアニ(UMP議員)が読者の質問に答える場を設けました。質疑応答がまとめられた記事はこちら↓
この中でマリアニ氏が強調しているのは、不法滞在の正規化は今までのように「自動的」ではなくなるものの、「ケース・バイ・ケース」で配布されるということ、つまり、一切配布されなくなるわけではない、ということ。また、各団体からの批判について、彼らが「移民を使い捨てにする法」と形容するのは全く根拠の無いこととし、実際、労働のために来た移民が失業した後もフランスに逗留できるよう修正案を盛り込んだとマリアニ氏は言っています。更に、家族呼び寄せについても、今までと変わらず保証されており、ただ充分な収入が必要である点だけが変わった、と弁護。
彼の答えを読んでいると、なんとなく安心感を与えようとしている印象を受けますが、移民法の改正は、不法移民だけでなく移民そのものの数を減らそうという趣旨が含まれていると考えられるので、実際問題として滞在許可証の取得が間違いなく難しくなると思われます。